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僕ら× 1st.

第28章 カーバンクル --Ar,Kn

~吉坂侑生side~

怒濤のクリスマスと正月が過ぎると、俺たちのメインイベントがやってくる。
今日は俺の彼女の誕生日。

俺は、早めに待ち合わせ音楽室のドアを開けた。

と隅の机でうたた寝の彼女。
こんな誰が来るかもわかんねぇとこで…不用心だな。

イチともう1人は、スキー研修で留守だし。

歩み寄って、彼女を覗く。
すよすよと可愛い寝顔。

本を読みながら寝ちゃったかな?
机に開いたままの本に目を落とした。

……もしかして、この本って伊織の…?

まだ読んでたのか…。
そりゃ、600冊とか言ってたしな…。

隣の椅子に腰掛けて、その本を手にとってみた。

少女が主人公のライトノベル。
伊織本ではなさそうだな…。

少し安心した俺だけど。

その本からカサッと落ちた1枚、歌詞入りの楽譜に釘付けになる。

それは思うに、映画化されたこの本の主題歌。
そこには、花野ちゃんと伊織が見えた…。

いつか他の誰かを好きになっても、あなたは永遠。

…という前向きながらも、後ろ髪を引かれているような歌詞。

花野ちゃんは、この曲を弾き語ったりしたんだろうか。

……それでも過去は過去。
俺は、俺が花野ちゃんにとっての"いつか好きになる他の誰か"であるなら、それでいい。
俺の傍にいてくれるなら、それでいい。

まだ俺たちは、これからなんだから。

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