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僕ら× 1st.

第28章 カーバンクル --Ar,Kn

楽譜を本に挟み直し、彼女の頬に口づける。

「花野ちゃん、おはよー」

机を軽くトントンと弾くと、彼女が目を開けた。

「侑生君!」

目をこすりながらも嬉しそうに微笑む、いつもの彼女。

俺は、隣の机に置いていたペーパーバッグを彼女に渡す。

「誕生日おめでとう!」

「わ、何かな…」

「開けてみ?」

促すと、ウキウキと包装をほどいてく。

「わぁっ!ステキ!侑生君、ありがとう!」

出てきた春色ワンピと薄いジャケットを広げて立ち上がり、身体に合わせる彼女。

「うん。似合ってる」

「ありがとう!これからの季節にピッタリ!このネックレスにもよく合いそうだね!」

近寄る俺は、花野の顎を軽く持ち上げる。
揺れる瞳を覗く。

ちゃんと俺のこと見てるよな?
他の男のこと、考えてないよな?

花野がそっと目を閉じたのを見て、口づける。
唇を動かし、チュッチュッと音を立てて吸いだす。

はぁ、気持ちよすぎて押し倒してしまいそ。

でも、ここは音楽室。
そして、彼女の誕生日。
消極的な彼女を抱く日じゃない。

「花野ちゃん、おやつ行こ。何がいい?」

「えっと…ホットケーキ!」

早くキミの全てを手に入れたい。
そうすれば、この不安は消えるのだろうか?

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