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僕ら× 1st.

第28章 カーバンクル --Ar,Kn

「え、さっき」

俺の動きを目で追いながら、彼女は戸惑いを見せる。

「さっきのは関係ねぇよ」

見下ろしたその位置から、すっと顔を寄せていく。

「だって、ここ、お店っ」

獲物にするように俺は、有無を言わさず彼女に食らいついた。

伊織を追い出したい。
俺だけでいっぱいにしたいっ。

"伊織を好きなままでいい"なんて言ったけど。

ウェイトレスが「お待たせしましたっ!」とプレートを運んできたって俺は、気にせず花野の唇を味わう。

「んふっ……は……」

抵抗するけど花野の力で、どうにかできる俺じゃない。

「ごゆっくりっ」と、ガシャっと音をたてて皿が置かれる。
ははっ、短気な女だなっ。

「……っはぁ」

唇を離したあとも、濡れた瞳で花野を見る。

ほしい……。

「もうっ、お外でやめてよねっ!」

「甘いのがほしいんだよ」

花野はぷんすかしている。
温度差ハンパねぇ……。

「はい。侑生君にコーヒー、お砂糖1グロス?」

と、角砂糖の入ったガラスポットを手に取る。

「1個もいらねぇっ!」

だいたい1グロスも入んねぇだろ?
砂糖12ダース(144個)?
それもう、コーヒー色の砂糖だろ?

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