
僕ら× 1st.
第28章 カーバンクル --Ar,Kn
「呼ぶまでここにいな?」と彼女に言って、ドアを開けて向こうに顔を出す。
柊がその辺の廊下にいるはずだし、俺が侵入していたことはわかってたか?
あ、俺のコートが机に置きっぱじゃねぇか…。
「あれ?アル兄。卒業取り消しになって、も一度高校生ですか?」
俺の出現に驚いたイチは、相変わらずな調子で絡んでくる。
「なるかよ」と返した俺は、倉庫のドアを閉めてコート方面に歩む。
「できそうな楽器探してたんですか?今よりずっと、花野さんに惚れられたいですもんねぇ。でも、楽譜読めるんですか?」
「読めなくもないけど。タンブリンとかなら、何とかなるかな」
…気づいてないか。
ま、よかった……。
「タンブリンって奥が深いんですよ?」と、手を止めたイチは、椅子に乗せた膨れ鞄を指差す。
「俺ね、今日は大漁なんです。花野さんからも貰ってホクホクですよ」
「なっにぃ?どれだよ?俺に寄越せよ」
ガタンと机を押し退けてヤツの花野チョコを奪おうかとも思ったけど。
まだおさまってない俺は、障害物のないイチの正面には身体を向けられねぇ。
でも、俺はまだ貰ってないのに!
出会い早々、倉庫に引き入れたのは俺だけど。
「あげるわけないでしょう?あ、俺。図書室に呼び出されてたんだった。楽器のできる男ってモテるんですねぇ。内記は病欠だし、今日はこれで帰りますね。アル兄、施錠ヨロシク。花野さんにも、そう伝えて」
ああ、俺は楽器のできねぇ男だよっ。
そんな俺を一瞥したイチは、ザッと片付けて鞄を肩に掛けた。
柊がその辺の廊下にいるはずだし、俺が侵入していたことはわかってたか?
あ、俺のコートが机に置きっぱじゃねぇか…。
「あれ?アル兄。卒業取り消しになって、も一度高校生ですか?」
俺の出現に驚いたイチは、相変わらずな調子で絡んでくる。
「なるかよ」と返した俺は、倉庫のドアを閉めてコート方面に歩む。
「できそうな楽器探してたんですか?今よりずっと、花野さんに惚れられたいですもんねぇ。でも、楽譜読めるんですか?」
「読めなくもないけど。タンブリンとかなら、何とかなるかな」
…気づいてないか。
ま、よかった……。
「タンブリンって奥が深いんですよ?」と、手を止めたイチは、椅子に乗せた膨れ鞄を指差す。
「俺ね、今日は大漁なんです。花野さんからも貰ってホクホクですよ」
「なっにぃ?どれだよ?俺に寄越せよ」
ガタンと机を押し退けてヤツの花野チョコを奪おうかとも思ったけど。
まだおさまってない俺は、障害物のないイチの正面には身体を向けられねぇ。
でも、俺はまだ貰ってないのに!
出会い早々、倉庫に引き入れたのは俺だけど。
「あげるわけないでしょう?あ、俺。図書室に呼び出されてたんだった。楽器のできる男ってモテるんですねぇ。内記は病欠だし、今日はこれで帰りますね。アル兄、施錠ヨロシク。花野さんにも、そう伝えて」
ああ、俺は楽器のできねぇ男だよっ。
そんな俺を一瞥したイチは、ザッと片付けて鞄を肩に掛けた。
