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僕ら× 1st.

第28章 カーバンクル --Ar,Kn

***

「花野ちゃんからバレンタインチョコ貰っちゃった」

帰路でそう微笑む柊にだって、俺は余裕で返せる。

「はん、よかったな。俺のおこぼれだ。心して食え」

そう言うと、ヤツはニヤッと笑う。

「倉庫で花野ちゃんと何してたのー?」

「るせー。お前、イチを止めなかったろ?」

「止めなきゃいけなかった?」

ニヤニヤとこいつはっ。

「お前、さっきからさぁ。甘い匂いぷんぷんさせてっぞ?ん?チ●コにチョコついてんじゃね?」

「アホか!フェラなんてしてもらってねぇよ!」

そんなことは、もっと彼女と仲良くなってから…。
してくれるかなぁ?

甘く疼く俺に、柊は「おや、残念」と真顔のまま。
そう言いながら、箱から出した大きなハートをパリッと噛んだ。

「え?それ何?花野ちゃんから?」

俺のよりおっきいし、それにハート型なんて。
そんなっ…花野ちゃんは、俺を好きなんだよなっ?

動揺しだした俺に、澄ましたギピ柊は答える。

「あ、これ?いつぞやのゲイから"ユウイチロウ君に"って届いたんだ。祐一朗の靴箱に」

「あいつ、生きてたのか」

よかったけど、まだ俺のこと覚えてんのかよ。

「手紙、読む?」

「いらねぇし。だいたいそんなん食って大丈夫なのかよ?」

「ん、美味いよ?本気が伝わってくるね。…食う?」

花野ちゃんとのチョコキスで俺は浸ってんのに、何だって他のヤツので上書きする必要があるか?
いつの間にか研究室のロッカーに入ってたチョコも、お前にくれてやるよ。

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