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僕ら× 1st.

第4章 風速0.64kt --Ar

「伊織も花野ちゃんのこと、知ってるかもな」

ボソッと柊がつぶやいた。

「ああ。同じ学年だしな」

「同じ学年で、あんなに可愛くて、おとぼけキャラだから、男子がウワサしないわけない」

「…やっぱモテるよな」

先ほどのマスター・ヨーダが彼女と接する様子を思いだした。
はたから見ると、わかるもんなんだな……。
もしかして俺もあんなふうに花野ちゃんを見ているのか?
あんな、瞳のなかでいつくしむような……?

「…あれ?」

柊は目を少し見開いたあと、細めて彼女を見る。

「ん?」

「今、ちらっと白っぽいのが見えた」

「は?お前、何見てんだよ?」

何を言いだすんだ?と思ったが、彼女の制服スカートの裾に注視してしまう。
膝丈くらいだけど、見えたの?

「いや、違ぇよ。ネックレスつけてる」

あ、そっちね。
ブラウスの襟元覗いたな、こいつ。
俺からのこの角度じゃ見えねぇな…。

「もしかして、恋人いるかも」

「え?中1だぞ?」

「俺は、いたよ?」

柊は俺の予想もしていなかったことを言いだしたが、ありえなくはなかった。

「ただつけてるだけって線もあるけど」

柊がフォローを入れて数分後、先ほどのマスターが戻ってきて彼女に何か耳打ちしたかと思うと、ふたりで教室を出ていった。

……もしかして、あいつなのか?

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