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僕ら× 1st.

第4章 風速0.64kt --Ar

「何だよ、今の会話は?」

さっそく、はしに身をひそめていた柊からダメ出しが入る。

「知らねぇよ。口から出てきたんだよ」

俺とお前とじゃ、レベルが違いすぎる。
女のコとまともに喋ったことなんて、生まれてこのかたねぇ俺だって、知ってるだろ?

「体育祭の準備で忙しそうだねとか。つぎ、いつピアノ弾くの?とか。台風心配だねとか。あるだろぉが!」

ああ、なぁるほど。

「そんな都合よく出てこねぇよ。何か緊張して思考が止まっちまう。もう変なこと口走りそうでさ」

「すでに口走ってるよ、マヌケ。あんな短い会話で…、何が"いい天気"だっ!」

「泣かさなかったから、よしっ!」

「前向きだけど、レベル低っ!」

柊は「ふうっ」とため息を吐き、「お前の会話聞いてたら肩こった」と言いつつ、首を左右に傾けた。

"盗み聞いてんなよ"と、俺が言おうとするより先に、柊が話しだした。

「あの男とのさっきの会話だと、花野ちゃん、つきあってる相手はいなさそうだな」

「ふうん」

「よかったな!」

マスターが教えてくれなかった"あいつ"の存在が気になるが、ひとまずはよかったかな。

あ、そうだ!

「なぁ、柊。花野ちゃん、空を見ながら目がうるうるしてたんだけど、女のコって自分がフッても泣くのか?」

「さあ?俺はフラれたことねぇからわかんねぇな。別れるときは円満だし」

…………へぇ、そう。

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