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僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

~本條柊side~

中等部最後の体育祭。
アルと一緒に花野ちゃんのクラスの応援兼待機席を見に行くが姿なく、クラスメイトに尋ねると欠席とのことだった。

「俺とお前の活躍、見せらんねぇな」

こんな行事でもないと、他学年と行動なんてできねぇのにな。
さらには、口から出る言葉が信用できないこの男からしたら、カッコいいところを見せられる限られた場なのにな。

「風邪かな?」

やや曇った表情のアル。
花野ちゃんの体操服姿、見たかっただろうな。

「見舞いに行く?」

「無理だろ。俺は、通りすがりの先パイだし」

好きな女のコにだけは、いつもの強気が身をひそめ、殊勝なことを宣う。

「伊織のフィアンセってどのコだろうな」

今日は中等部全員が運動場に集まっているはず。

「さあ…どんなコか知ってんの?」

さほど興味がなさそうにアルが尋ねる。

「深窓の理系女だって」

「わかんねぇよ、それじゃ」

「ま、分速20mとか言ってるコじゃねぇわ。そんな穏やかな台風、逆に怖っ」

だって、1m進むのに3秒かかるんだぜ。
理系女なら瞬時に計算するよな。
というか、文系でもありえなくね?
ピアノばっか弾いてる芸術系なら、ま、うなずけるさ。

「お前、それ花野ちゃんの前で言うなよ」

と言いつつも、アルは口のはしをあげる。
わかってるよ。
そういうところも、可愛いんだよな?

「俺は、お前をからかってるだけ」

そう言うと、ひくっと口角をひきつらせた。

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