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僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

その後、アルの花野ちゃん通いがまた始まった。

11月に入っても、あいつはやっぱり寝たふりで……。
俺はそっと近づき、やつのケツを横から蹴飛ばした。

「痛ってぇな!蹴ったな?」

壁にもたれて身体半起こしのまま、俺を見あげてにらむ。

「おい、マジで風邪ひくぞ?」

「んだよ。寝てなきゃ、花野ちゃんが来てくんねぇだろ?」

「いつまでも待ってんじゃねぇよ!」

お前が気づいてるか知らねぇけど、俺たちはあと4か月たらずで卒業なんだぞ?
12月初旬には文化祭、期末テスト、冬休みが明けると、2月なかばには1年生はスキー研修、3年生は受験をふまえて午前中授業または自宅待機となる。

成績もよく、素行の悪さも隠しとおせている俺たちは、そのままエスカレーター式に同敷地内の高等部に進むといっても、建物も違うんだ。
何かの拍子に偶然出会うことはないだろう。

日頃の傍若無人と打ってかわってウジウジしたアルにあきれはてていると、美人な女のコがひとり、音楽室のドアに近づいてきた。
バレー部のユニフォームを着ている。

「あ、アル先パイ、柊先パイも。こんにちはぁ」

俺らを知っているらしく、そのコは窓の近くでたむろっている俺たちに挨拶してきた。

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