
あまい非日常の中で
第1章 香澄?私は凛です!
「ただいまー」
誰もいないはずの自宅の扉を開けて入る。
誰もいないはず、なのにサイズの大きなスニーカーが綺麗に揃えてポツンと置かれている。
またかぁ。
苦い顔をしつつ自室へ入ると、緩んだ顔をしてひらひらと手を振る男の姿が目に入った。
「おかえり、“香澄ちゃん”。昨日もすごく良かったんじゃな〜い?」
お構いなく私のおきにいりの座椅子に座りつつ、同じマンションに住む幼馴染はそう言った。
今年の春、高校1年生となった私【成澤 凛(ナリサワ リン)】に対し、この男【遠藤 凪(エンドウ ナギ)】は私の3つ上、つまり大学生1年生だ。
「今は凛!なんでもいいけどなっちゃん、勝手に私の部屋に居座らないでよね。もう慣れたけどさぁ」
あははと笑いながら彼は「まあ座りなよ」と言う。
ここ、私の部屋なんだけどなぁ。
