後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第8章 淫らなアフターワーク
──…
先週にあった時間の余裕が、そのまま今週の余裕に結びつくとは限らない。
そんな職場でないことは、何年も働いているのだから承知している。
「季里さーん。依頼していた見積りの結果がメールで届いているので、確認お願いしまーす!」
「わかったわ、穂花」
「なるべく今日中に返事がほしいそうです」
「今日中に…? ……、なんとかするわ」
ここ、藤堂建築アトリエ事務所は、いつも通りの余裕のなさで今日も稼働していた。
事務担当の穂花からメールの受信を知らされても、私は手にした書類から目を離すことなく返答した。
「あの……立花さん。模型用のカットデータがもう1枚必要なんですけどー……」
そんな私からピリピリとした空気を感じ取ったのだろう。
中央のテーブルで作業していた男の子が、座る私の背中に恐る恐る声をかけてきた。