後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第9章 詫びのしるし
「──…」
「…どうして黙っているの?」
「仕事以外の話をすると……先輩が怒るので。今の僕が思っていることは口に出せません」
「ああ……そう」
私は呆れて目をそらした。
葉川くんてば、そろそろ飽きないのかしら。
「正しい判断ね」
「やっぱり駄目なんですか?」
「駄目よ」
「──…僕は先輩に嫌われてしまったのでしょうか。あの日…事務所で、無理やり先輩をイカせたから」
「…!」
何を言い出しているのか、この男は──。
触れられたくなかった記憶を呼び起こされ、その突然の話題に面喰らっている時
タブレットに置いた左手に、葉川くんが手を重ねてきた。
ぎょっとして身を引く。
だが狭い車内では、逃げられる距離もたかがしれていた。