後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第9章 詫びのしるし
瞬時に私は手を引いた。
重ねられた手を振り払う。
ハァ…っ
彼と対峙した私の目は焦りの色を隠せていなくて…
無表情を貫いていた顔も、動揺のせいで赤みを帯びてしまった。
「…怒っていますか」
「……っ」
軽く触れられただけで、どうしてこんなに身体が怯えてしまうのか…と
自分への不甲斐なさに腹も立つ。
でも
「──ッ…怒っているわ」
そっちがその話題を持ち出すなら、こちらとしても気丈に振る舞う必要がある。
先々週、事務所で葉川くんに襲われた夜から、私は彼と仕事以外の話をしていない。
もともと世間話なんてする仲じゃないけど
それでも…私の彼に対する避け方はあからさまだろう。
あ え て そう接しているのだから、葉川くんが気付いているのは当たり前。
「職場であんなことをされて許せるわけないわ」
「疲れている先輩のためを思ってでしたが」
「よく言えるわね…!!」
私はタブレットの電源をオフにして、胸の前に掲げた。
隣の彼との距離をとるために。