後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第10章 それだけの関係
その後の打ち合わせは、とある賃貸マンションのリビングで行われた。
施主である夫婦を相手にテーブルをはさんで二対二で向き合っている。
私と葉川くんには冷たい麦茶と、切り分けた桃が差し出されていた。
「本当に申し訳ありませんでした…!!」
「いえ…」
三十代半ばの夫のほうが、もう何度目かという謝罪を私たちにいれてくる。
確かに、向こう側の都合で打ち合わせの時間を遅らせたわけだけれど
謝られればそれだけ自分としては気まずくなる事情があるのだが…それは、彼らにわかる筈がない。
「立花さんはお忙しい方と聞いていますもの」
「そんなことはないですよ」
帰ってくるなり大急ぎで桃を切り分けてくれた妻の女性も、謝りながら慌ててテーブルについた。
私は彼女に、あまり慌てないようにと声をかける。
何故なら彼女のお腹は少し膨らんでいて…そこにはすでに新しい命が宿っているからだ。