後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第10章 それだけの関係
今日の打ち合わせに遅刻した理由も、産婦人科へ検診に行っていたからだとか。
私の視線に気付いた彼女がお腹をさすりながら微笑む。
「もうすぐ六ヶ月なんです」
そう言う顔は幸せに満ちていた。
「今日の検診で先生に言われました。女の子だそうです」
「そうですか…!よかったですね、次は女の子がいいとお二人とも話していましたし」
「ふふふ」
今度は夫婦二人で顔を見合わせて笑っている。
数ヶ月前から付き合いのある私としても、その光景は素直に微笑ましいと思えた。
「新しいご家族のためにも、良い家が完成するよう我々もつくしますね」
「ありがとうございます立花さん」
「さっそくですが仮決めの図面ができたので──」
私の合図に従って、葉川くんがファイリングされた図面をテーブルに置く。
いつもより大きいA2サイズの図面だ。
ファイルを開くと二人がそれを覗きこむ。
…だが図面だと正直、家の構成は掴めないだろう。
私は同時に模型を持ち出し、風呂敷に包んでいたそれを彼らに見せた。