後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第2章 藤堂建築アトリエ事務所
その第一声で、だいたいは察した。
この混乱の原因──犯人はこの男だ。
「…お知り合いですか藤堂さん」
「ん、立花には言っていなかったか?」
「何も」
何も聞いていないわ。
仏頂面で三文字返事をした私の横をすり抜け、藤堂さんは入り口の青年の肩に手を置いた。
「紹介しよう。今日からここで働いてもらう、葉川くんだ」
「働く…!?」
「院卒の、新入社員」
「…ということはバイトでもないんですね?」
「ああ」
新入社員。なんだ、新しく雇ったわけか。
しかしどうして、そういう大事なことを誰にも知らせないのかこの人は。
「ああ!」
「どうしたの穂花」
「そういえば新しい子が事務所に来るから手続きをって話……あれ、今日だったかしら?」
穂花も知っていたのね。
事務担当の彼女が知らないはずない…か。
なら知らなかったのは私だけね。