後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第2章 藤堂建築アトリエ事務所
この職場の " 報 連 相 " はいったいどうなっているのよ。
「もっと喜ばないのか立花。人手が足りないとお前が俺を急かしたんだろう」
「はぁ」
「葉川くんは坂下教授のとこの生徒でね。バルセロナへの留学経験もあり、優秀な人材だ」
「坂下教授の……そうですか」
坂下教授というのは建築業界ではそれなりに有名な人で、建築家として実務をこなすかたわら、大学教授としても勤めている。
大手ゼネコンや組織系事務所にも多くのパイプを持つ人だ。
つまり彼の研究室の生徒なら才能は保障済みということ。
“ これは期待できそうね ”
軽く説明を受けただけで、私の中の敵意は無くなっていった。
「…?」
「……クス…ッ」
「な…っ」
と、言いたいところだけど。
「宜しくお願いしますね。先輩」
笑顔で握手を求めてきたこの男。
どうも、危ない匂いしかしないのよね──。