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後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~

第10章 それだけの関係


施主であるこの夫婦は当初から、一風変わった家を藤堂設計事務所に依頼していた。

一言でコンセプトを言い表すなら

「壁のない家」。

どこにいても家族の気配が感じられるようにしたいのだと話していた。

しかし建設地の土地は狭く、四人家族に必要な床面積をかせぐためには三階建てにしなくてはならない。そうなると…必然的に一階と三階の隔たりは大きくなってしまう。

難しい案件だった。だが

私は藤堂さんとも話し合い、スキップフロア形式の家を設計したのだ。



「1階、1.5階、2階、2.5階……というように、少しずつ部屋の床レベルを上げながら、螺旋階段のように配置しています」

「ここからここの…全部の部屋がひとつながりということですか?」

「もちろん視覚的な遮りはありますが、空間的な話をすれば正真正銘、ひとつながりです」

「面白いですね!」


簡易模型を使って説明してくれているのは葉川くんだ。

私は施主と一緒にそれを聞きながら、間違いがないかチェックしている。これも大切な後輩指導。

けれど訂正をする隙なんてない。

葉川くんの流れるような説明は、まさに言うことなしだった。


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