後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第11章 かつての男
言い出しにくそうに首の後ろを掻いていた啓輔が、やっと口を開いたのと同時──
突然、横入りしてきた別の声が私の名を呼んだ。
「──季里さん」
「はが…」
あっという間に腕を掴まれ
彼のほうへ引き寄せられる。
「戻りますよ」
それは有無を言わせぬ態度だった。
腕を掴んだまま車へと戻ろうとする葉川くんの横で、私は思わず啓輔と目を合わす。
すると向こうは「きょとん」という形容がぴったりな顔で私たちを見ていた。たぶん、私も似たような表情なのだろう。
高いヒールのため転ばないように気を付ける私は、葉川くんに引かれるまま車に戻った。
助手席のドアを開け──
少し強引な力で、押し込まれる。
「ちょ…!!」
突然のことで驚いていたけれど、やっと動いた私の口は彼に抗議していた。
「何のつもりよ!いきなり…」
「……」
「葉川くん?」
ドアノブに指をかけてこちらを見下ろす彼に、私は問い詰める。