後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第11章 かつての男
「らしくないですね。元カレと会ったのがそれほど──ですか」
「…?」
「今日は早めに帰られたらどうですか?先輩」
「何よ、それ…」
模型をスッと横によけて、目を合わせたまま顔を近付けてきた葉川くん。
笑っている…
けれど、うん、目が笑っていないわ。
そんなに私が上の空だったのが気に障ったのか。
確かにいつも仕事に集中しろと注意しているのはこちらのほうだ。なのに当の本人がこんなじゃあ…腹も立つと言うところだろうか。
「まだコンペの話が終わっていないわ」
「今度は僕が設計案を作る番です。その成果は明日見せるので…たまには、先輩も早めにあがってください。前々から言い続けていますが働きすぎですよ」
「でも」
「帰りの車でも、体調を崩されていましたし」
「あれはね…っ」
何にしても「先に帰れ」だなんて後輩に言われる筋合いはない。
もちろん私に帰る気なんてなかった。
なのに、葉川くんの言葉を聞き付けた藤堂さんが、自分のデスクから声をかけてきた。