後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第11章 かつての男
──
「…ハァ」
葉川くんといい藤堂さんといい、気の遣い方が間違ってるのよね、いつも。
私はそんなか弱い女じゃないっていうのに。
“ それにしても葉川くんの態度は… ”
葉川くんのは、…さっきの彼のは気遣いというより
私が上の空だったから怒っていた…?
“ …って、彼の一挙一動にいちいち悩んでいたらそれこそ徹夜作業になりそう…。やめよう ”
ところどころペンキが剥げたスチール製の外階段を、私のヒールが叩いて高音を出す。
時刻は午後7時。
夏至が近いとはいえ日は沈んでおり相変わらず外は暗かった。
ただ普段より道路を走る車が多い。
皆が家路につく時刻──なるほど常識的な時間というわけね。
「おい」
まだいろいろと腑に落ちない私は、不意に聞こえた階段下からの声に、眉をしかめて応えた。
「──…? どうして…ここに」
「お前の職場、ここだったよなーって…」
「…!」
声の主を確認しないまま眉をしかめて
そして、その相手が想定外だったので思わず凝視してしまった。