後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第11章 かつての男
「ハァ……とりあえず、行きましょ」
「いいのか…?」
「職場の前で長話はしたくないもの」
啓輔が何の用でやって来たのか、結局聞けてないけれど、ここで立ち話は嫌だった。
改めて階段を降りきった私は、一度 啓輔と向き合ってから歩き出す。
「ハァ…」
短いため息がやまない。
なんだか今日はいろいろありすぎて疲れたわ…。
「──…」
私たちは事務所から離れた。
事務所からはガラス越しに明かりがもれて、外が暗いぶん強く光っている。
そこに立って、下の様子を伺う人影──。
「不愉快な女( ヒト )だ……」
啓輔と並ぶ私の後ろ姿を、冷たく見下ろす瞳。
私たちの姿が完全に見えなくなる前に、ガラスに寄りかかっていた肩を離して…
彼は作業に戻っていった──。