テキストサイズ

後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~

第3章 たらしな新人くん



「私にも名乗らせてくれないかしら。名刺を渡したいので、手を」

「はい」


離して、まで言い終わらないうちに彼はパッと手を離す。

私はとっとと自分のデスクから名刺を持ち出し、まだドアの前から動かない彼に差し出した。


【 藤堂建築アトリエ事務所 】 一級建築士
立花 季里( タチバナ キリ )


たったこれだけの私の肩書きを手渡す

…と、即座に彼から反応が。


「センスを感じるデザインです」

「ありがとう」

「一級の資格をお持ちなんですね」

「一度は落ちたわ。再受験して受かったの」


名刺ひとつをとって私を褒めようとしてくれる彼だけど、素直に喜ぶなという警鐘が頭の中でうるさく鳴っている。

なので対応は素っ気なく…私は藤堂さんに話をふった。


「彼の席はどこにしますか?」

「立花の隣に空いてる席が……て、ん?空いていないな」

「今は模型置き場ですね。片付けましょう」


案の定、新人に準備された席はない。

藤堂さんの返事が終わらないうちに、私は片付けを始めていた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ