後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第15章 ドレスコード
受話器を耳に、がっしりとした背中を曲げている藤堂さんの口からは謝罪の文面が聞こえる。
今度は何を忘れていたのか…。
パーティーがどうのと言っていたから、きっとどこかの催しに招待されていたのだろう。それの返事をしていなかったに違いない。
少しして受話器を置いた藤堂さんは
「──…、立花」
冷めた視線を向ける私の名を呼んだ。
嫌な予感がする。
「明後日なんだが…」
「藤堂さんが出席すればいいだけですよね?」
「それがそうもいかない」
聞けば、藤堂建築アトリエ事務所で設計したホテルが来月からオープンを迎え、それに際して関係者を招いての祝賀会があるらしい。
祝賀会はそのホテルの最上階にあるレストランでおこなわれる。
設計者の藤堂さんが参加を断るわけにはいかないだろう。
でも、私は関係ない。
「私はそのホテルの設計にたずさわっていませんし、参加する必要ないと思いますが」
「それがな、どうも立食式じゃないらしい。二人用のテーブルが用意されていて、各々パートナーを連れてくるようにと言われた」
「いないと伝えればいいじゃないですか」
「そんなこと恥ずかしくて言えるか!」
なおも冷たく突き放すと、藤堂さんが悲愴感たっぷりの表情で食い下がってきた。