後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第15章 ドレスコード
「先生だけずるいですよね」
「…何? 何か言った?」
はっきり聞き取れなかった。
だから私はコンペの資料を広げながら片手間に聞き直したが、葉川くんはそれに答えなかった。
彼は代わりに私ではなく藤堂さんのほうを向く。
「──…先生」
葉川くんに呼ばれて、海外土産( ミヤゲ)のクッキーの袋を破いていた藤堂さんが顔をあげる。
「どうした?」
「後で先生に相談したいことがあります。昼食時にいいですか」
「…あ、ああ、いいぞ」
ちょっと意外そうな顔をしつつ藤堂さんはクッキーを口に運んだ。
藤堂さんに相談?
何だろう…コンペのことかしら?
気にはなったけれど、疑問を引きずるほどでもない。
ただ──実はこの日、男二人だけで交わされた話が
後々、大きく私に関わってきたわけだ。
──…