後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第16章 汗と横顔
そして別のペットボトルを私に差し出した。
「どうぞ」
「…ありが…と」
「なかなかキツイですね、これ」
「殺されそうよ……ハァ」
水を受け取って口に含んだ。
ただ、私を気遣う葉川くんも汗がすごい。
走者を眺めている彼の横顔には疲れが出ていた。
「藤堂先生は…やはり速いですね」
「そりゃあマラソン馬鹿だし…。でも、君もけっこう良いタイムだと思うわ」
「そうですか?」
「普段は何か…スポーツ、してるの?」
職場と違う服装。息切れした声。
今日だけはあの眼鏡も外し、心なしか…いつもより真剣な目付き。
汗だくでも尚、爽やかさが衰えないのはさすがと言うほかないけれど。
「スポーツ…ですか。──…セックスをスポーツと呼ぶのなら、学生時代はそれなりに」
「…っ…それはスポーツじゃないわね」
…って、中身はやっぱり爽やかじゃなかったわ、この男。