後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第16章 汗と横顔
私は自分のノルマである3周を走りきって、同じくラストにのぞむ穂花に襷を渡した時だった。
さっさと家に帰って休むことだけを考えながらランナーの待機場所に戻ると、チームメイトの男三人が何やら困っている。
足を引きずりながらその場に向かうと、私に気付いた藤堂さんが声をかけた。
「ハァっ…ハァっ…──!」
「お、立花! 大丈夫か? お疲れ様!」
「ハァ…っ…お疲れ様です…!! …それより、どうかしましたか」
「あ、ああ…っ。少しアクシデントがあってだな…」
「…アクシデント?」
芝生に座っているのはバイトくんで、彼は苦悶の表情で自分の脚をマッサージしていた。
それを見守っているのが藤堂さんと葉川くん。
噴き出す汗をタオルでぬぐいつつ、話を聞いていったところ…
「彼が脚を痛めたみたいなんだ…っ」
だそうだ。
仕方がない。
いくら若い男の子とはいえ、日常的に走っていない人間が急に身体に負荷をかければ怪我もする。
私自身も苦しくて死にそうだが、とくにこのバイトくんは素直にはりきって走っていたから、自分の限界を越えてしまったんだろう。