後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第19章 優先席は彼の席
「よかったじゃない」
毎度のことながら、どうして穂花はこういう話を私なんかにするのかしら。
面白い返答なんてできないのに。
こんなテンプレ返事しかできない私に話したところで楽しくないと思うんだけど…。
「はい♪ よかったです」
同姓の同僚が私ひとりだなんて気の毒ねと考えていたら、穂花はやっとメニュー表を手に取った。
でも手に持っただけで開こうとはしない。
垂直に立てたそれで口許を隠し、ふふっと含み笑った。
「最近の季里さんがすごく幸せそうで、うらやましいな~って思ってたところだったから」
「……え?」
「付き合うことになったんですよね? 葉川くんと」
「──…、え!?」
なによなによ
急になによ
「…ん? ちょっと…っ…それ、どうして?」
「もしかして秘密の恋人でしたか!?」
「……っ」
「まぁ確かに同じ職場となると、内緒にしておきたい気持ちもわからなくないですけど…」
無関係だったのろけ話が急に私のほうを指してきたから(真っ直ぐ伸ばした指を容赦なく突き付けて)対応に困りどぎまぎしていた。