後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第19章 優先席は彼の席
葉川くんが店員に目配せをして、さっそく注文に移ろうとする。
若い男の店員は愛想よくテーブルに近付き、私たちを交互に見ながらどちらかが口を開くのを待っていた。
「サラダランチを二つ」
私の分までまとめて注文した葉川くん。
飲み物はどうするかを店員に聞かれ、彼は私にその質問を流した。
「先輩は珈琲でよかったですか? 食後に」
「ええ…私は珈琲で。──…あー、それと」
「…?」
「やっぱりサラダランチをひとつにして、もうひとつヒレカツプレートをお願いします」
「先輩? それは…」
「男はもっと食べなきゃ駄目よ。それとも、ヒレカツは嫌いなの?」
「…いいえ、好きです」
「ならいいでしょ」
私は飲み物を頼むどさくさに紛れて注文を変更した。
改めて確認した店員にもう一度注文を繰り返し、店員が「かしこまりました」とテーブルから離れたところで…小声で言う。
「私と同じものを食べたいなら……その、少しわけてあげるから」
我ながら、上から目線な発言ね。
恥ずかしくて顔が温かくなってきたのも、こんな自分がみっともないからかしら。
「…っ…それに空腹で午後の作業に支障が出るのは、困るし」
それっぽい言葉も付け足して、私はすまし顔を貫いた。