後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第19章 優先席は彼の席
これが、穂花に言われた『たまには無理をして相手が喜ぶ事を…』の実践。
それにしても、こんな時に葉川くんがその小悪魔っぷりを発揮して「いいえ大丈夫です。自分で食べるので」なんて言いだしたらどうしよう。
それが不安。
「……フフ」
「……っ」
「先輩に食べさせてもらえるなんて贅沢ですね」
でもその不安は杞憂に終わり
パクっ
「…!」
「ああ本当に、美味しい…です」
彼は大人しく差し出されたそれを食べて、唇についたドレッシングをペロリと舐めた。
「ドレッシングは何でしょうね? この味なら、ヒレカツのほうも楽しみだな」
ヒレカツがきたら先輩にお返ししますからと付け加えて、彼は二口目を要求する。
若干…彼の態度には、場慣れ感がいなめないけれど、それを気にしている余裕が私になかった。
きっと今の私は耳まで真っ赤に違いない。
若くもないくせに、こんな事でドキドキしてしまうだなんて。
この後、一口サイズのヒレカツを彼の箸から直接食べた時──
私の顔は沸騰寸前まで熱くなり、グラスの水は一瞬で飲み干されることになる。
──