後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第20章 貴女が涙を流すなら
雨だ。
思えば湿度も高いし、暗がりの空は星が見えずどんより曇っている。いつ降りだしても可笑しくない空気ではあった。
天気予報では曇りだったけれど。
“ すぐやむのかしら? ”
私はこれくらいの小雨なら問題ないと…そう思って立ち止まった。
顔を上げて空を仰ぐ。
ポツ、ポツ、ポツ
しかし雨の勢いは徐々に強くなった。
周囲の人間の歩調が速くなり、目的地まで急ぎ始める。
傘を持ち歩いている人はごく少数なようだ。
私も今は持っていない。
この蒸し暑い季節……夕立に備えて折り畳み傘を持っていなかったのは反省点でもある。
…と、反省しても天気は待ってくれない。
駅まではもう少し距離があるのだ。
自分が濡れるのはどうってことないのだけれど、荷物が濡れるのは困る。
それに電車に乗ることを考えれば、びしょびしょ女なんて迷惑になりかねない。