後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第20章 貴女が涙を流すなら
だから事務所に引き返そう。
そう結論付けたのはすぐだった。
自分のデスクの引き出しに折り畳み傘を入れていた筈だから、取りに戻ることにする。
そうこうしている内に雨脚( アマアシ )は益々激しくなり──
足の運びも速くなった。
“ こういう時に限っては、ヒール靴はいてるのを後悔するわね ”
私は転げないように気を付けた。
「ハァ…ハァ…、夏の雨は嫌い…」
そして数分後、事務所の階段を駆け上がって中に入った私。
湿気のせいで、濡れた服の感触が余計に不快。
前髪をかき上げながら入った室内で鞄を肩から下ろした。