後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第20章 貴女が涙を流すなら
横向きに寝る私を、背後から彼の両腕が包む。
冷えた背中が胸板と重なり──
互いの鼓動までもが伝わった。
ドク...ドク...
葉川くんは何も話さない。
説明も弁明も──いっさいの事に口を閉ざしていた。
よく舌が回る人だから、何かしらの詭弁( キベン )を用いてこの場をおさめる事ができるのかもしれないけれど、それでも…。
今は何を告げられたところで混乱が加速するばかりだから、放っておかれる事を願う私の気持ちまで…
きっと、葉川くんにはお見通しで。
だから黙っているのだと思う。
私の涙が頬の上で乾ききるまで
葉川くんはずっと…その腕で抱きしめていた。
“ 君は本当に卑怯よね…。怖くて、悔しくて、憎らしいわ…っ ”
布団の中で体温が上がる。
この温もりを知ってしまった私は、やっぱり以前よりもカッコ悪い女になったのだと──
そう、受け止めざるを得なかった。
服なんて、もうとっくに乾いていたのに。
──…