後輩くんの挑戦状 ~僕に惚れてもらいます~
第4章 誘惑のドライブ
知っている…?
ああ、そうか。
「ここで働く前の予備知識として、いちおう私の作品を調べたのね……まぁ、そうするわよね」
「違います。知ったのは僕が学部生の時です」
「え…」
「建築雑誌で見ました。市の生涯学習センターのコンペティション──。藤堂アトリエ事務所も参加されていましたよね」
「…確かにそうだけど」
彼が言っているのは三年前に私が担当したコンペのこと。
それは…私が初めて藤堂さんに任されたプロジェクトでもある。
自分なりに納得のいく設計ができたし
審査員の評価もなかなか良かった。
でも
「──…最終選考まで残っただけよ」
結果は、負けたのだ。
私が設計した作品は施工まで結び付かなかった。
「僕は、先輩の作品のほうが好きでしたよ」
「……そんなの、お世辞ね」
「本当です。ランドスケープ( 景観 )と一体となった形が素敵でした。素材の使い方も工夫されていましたよね?」
「……!」
この笑顔のどこまでが、本心なのか。
当時の私がこだわったところを、どうして葉川くんは理解してくれているのか。
…わからない。