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第8章 うらはら

「あれ、河辺が書いたの?」


 隼斗の問いかけに対し、河辺はおどけた顔で言う。


「さああねえぇ〜、誰だろう〜」


 隼斗は沸々と血が煮える思いだったが、なにも言い返すことなく教室からでた。


 すると後ろから、寺内真子が一緒に出てきた。


「相羽くん」


 隼斗は振り向く。


「あんな、嫌がらせ気にすることない。私も本当は言い返したかったけど……ごめんなさい、私、気が弱くて……」


 隼斗は、真子を見た。


「俺に気がなかったら、近寄らないでよ。寺内さん、女性が好きなんでしょ。なら、関係ない。気持ちは嬉しいけど……」


 隼斗はそう言って、階段を下りていった。


 真子はなにも言えず、ただ隼斗の後ろ姿を見送るしかできなかった。


 校舎裏で、静かにうずくまる隼斗。


 そこに、優雅がやってきた。


「ふざけやがって……」


 その声に、隼斗は頭を上げた。


「クラスの連中が、俺と隼斗の中をヤイヤイ言い出してよ……昨日のことも誰かに見られてたみたいだ」


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