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WーWING

第8章 うらはら

『とりあえず連れてくるからさぁ、いつもの部屋着姿はやめなよ』


 そう言って、美晴は電話を切った。


「彼女? え……僕に?」


 もちろん、美晴は妹だから、兄の自分のことはよく知っているし、その相手にも、どんな人間かは伝えているはず。


 あの声の様子では、嘘には聞こえない。


「本気?」


 気分が上向き。あのゲイごっこをしていたことで、効果が出たのでは?


 優雅がやっていたことは、間違いじゃなかった。


 隼斗は、自分が持っている私服の中で、最もお洒落に見える物を探した。


 なにもない。


 ダブダブのデニムパンツと真っ赤なTシャツ。


「まだ、マシか……」


 いつものシャツと短パンとは違って、落ち着かないが、鏡を見て、髪型も少し横に流してナチュラルにした。


 ハゲが見えないようにしなきゃな。


 背の低さと、太った腹回りは、どうしようもない。


 あとは、爽やかにするか、真面目にするか……。


 美晴の友達、きっとかわいいんだろうなぁ。


 もし、付き合えるようになれば、約束通り、優雅に合う女の子を紹介してもらおう。

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