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第10章 男の約束

 隼斗は家を出た。


 誰にも止められることなく……。


 夜の9時。


 家を出たのはいいが、金は持ってない。


 財布の中には1300円。


 だが、家には帰りたくなかった。


 家出をしてから10分足らず。


 すぐ帰るわけにもいかない。


 隼斗が歩いて辿り着いたのは、お寺。それも、父、雲幸が住職のお寺だ。


 境内の中でも、怖くはなかった。昔はここで、よく、美晴と輝基の三人で、花火をした。


 本堂にむかって、ロケット花火を噴射させたことがあった。


 とても懐かしい。


「だから、バチが当たったんだな。てか、親父もバチ当たれっての」


 すると、携帯電話がブルブルと振動した。


 画面には、「優雅」と表示されている。


 あわてて、電話に出た。


「もしもし」


『隼斗、元気か?』


「優雅……どうして?」


『どうしてって……親友が電話したらダメなのか?』


「そうじゃないけど……」


 隼斗は、優雅は彼女と一緒にいるものだと、思っていた。

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