テキストサイズ

WーWING

第10章 男の約束

『へへ……よせよ。でも、そう言ってくれると嬉しいよ。また、明日から頑張ろうぜ』


「ありがとう、また明日ね」


 隼斗は電話を切った。


 とてもじゃないが、家族の問題事は相談出来なかった。


 でも、そんなことはどうでもよかった。


 今は、優雅の気持ちが一番嬉しかった。


 夜のお寺の境内でも、全然、怖くなかった。


 優雅と繋がっていること、それだけで心強かった。


 ふと、どこからか声が聞こえてくる。


「にいちゃーん、にいちゃーん」


「あにきぃー、あにきぃー」


 輝基と美晴だ。


 なにが、兄ちゃんだ。なにが、兄貴だ。


 もう、血の繋がってない他人じゃないか。


 本堂の木段に腰をおろし、返事をせずにうつむいていた。


「あっ、兄ちゃん!!」


 そんな隼斗の姿を、輝基が見つけた。


「チッ」


 二人に見付かったことで、隼斗は舌打ちする。


「兄ちゃん」


 輝基が駆け寄り、その後ろから美晴もついてきた。


「兄貴ぃ、見付かってよかった……」


 美晴は隼斗を見付けて安心したのか、うっすらと涙ぐむ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ