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第10章 男の約束

「兄ちゃん……帰ろうよ」


 息を切らしながら、輝基はそう声をかける。


 隼斗は返事もせず、うつむいたままだ。


「俺、兄ちゃんにいてほしいよ。今までずっと一緒に遊んだじゃないか。家に帰ろうよ」


 隼斗は顔を上げた。


「もうやめろ。実の兄貴じゃないんだ。だいたい、俺とお前達とは、似てないだろ。受け継いだDNAがそれぞれ違いすぎるんだ。血が繋がってないから、当たり前だな」


 美晴は隼斗の手を引いた。


「そんなこと、どうでもいいよ。ずっと私達の兄貴でいてよ」


「美晴、本当は嫌だろ。赤の他人で変態だぜ」


「嫌なんて思ってない。だけど、彼女がいなくて寂しいから、あんなことしたんでしょ。だから、彼女紹介しようって思ったんだけどさ……」


「俺、思いっきりフラれてんじゃん。てか、俺に傷つけただけじゃねえかっ!! だったら、美晴。もし、付き合ってくれって、俺が言ったらどうする?」


「う〜ん、やっぱり太っててチビでハゲは嫌かな……」


「ほら見ろっ!! 全然、救いなんてないじゃねえか!!」


 輝基が隼斗の肩に手を置いた。


「兄ちゃん、もう帰ろうよ」


「お前、この状況の下で帰れるかっ!! てか、お前ら俺が家を出る前に、無茶苦茶言ってただろうがっ!! 輝基、お前、隼斗くんて言ってたな。美晴は完全に変態扱いしてたじゃないか」


「違うよ、あれは笑わせようと思って……」


「笑えるかっ!!」

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