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WーWING

第6章 ディープインパクト

 朝は、あっという間にやってきた。


 もっと、夜のままでいてくれよ。これほど、朝がくるのが辛いと思ったことがない。いや、辛いならまだいい。息苦しい。


 美晴の顔が頭にチラつく。あんな顔、初めて見た。


 軽蔑しているだろう。怒っているだろう。嘆いているだろう。


 神様……もし、よろしければ、私を苦しめずに、息の根を止めてくださいませ。


「兄ちゃん、朝食だよ」


 兄の苦しみを知るよしもない弟、輝基が、2段ベッドから下りながら言った。


 行くしかない。行くしかないだろう。


 美晴は、変態兄貴をどんな目で見るのだろうか……。


 下りていくと……輝基の横に……いた。


 野菜ジュースを飲んでいる。


「ぉはょぅ……」


 元気な挨拶が出来ない。


「隼斗、おはよう。お父さんはもう、お寺よ」と母、富美子が言う。


 どうやら、美晴からはなにも聞いてないようだ。


 親父はいつも早い。おそらく、白いふんどし姿になって、水をかぶっているのだろう。だからきっと、話は聞いていないはず。


「兄ちゃん、お先いただいてるよ」


「おう……」


 輝基も聞いていないようだ。

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