kiss & cry
第10章 xA not REC
遡ること30分前***
「申し遅れました。
私、この店の店長をしております、
佐々倉と申します。」
タイプライターで印字された名刺を差し出しながら
ニコッと微笑んだ店長さん。
おずおずとそれを受け取ると
ずいっと距離を詰めて俺の鼻先で
楽しそうに言葉を続ける。
佐「雅紀と私は従兄弟でして。
歳は6つほど離れていますが
母親同士が仲のいい姉妹だったもので、
小さい時からお守役といいますか。
まぁ兄弟同然に育ちました。」
ニコッと人懐こい笑顔。
あ、笑うとちょっと似てるかも……
佐「にしても…
酔っ払った雅紀がうわ言のように
二宮さんの名前を繰り返していたので、
どんな方が来るのか
楽しみにしていたんですよ。」
N「え? 」
佐「ふふふ、てっきり恋人でも
待っているのかと。」
N「…それは期待はずれでしたね…… 」
佐「さぁ、どうでしょう…
恋をしている人、という意味で言えば
あながち私の目に狂いは無いみたいですが?」
N「んな、///!」
佐「お、タクシー到着したみたいですよ?
私、雅紀を連れて行きますので
先に入り口で待ってて下さい。」
N「あ、あの、佐々倉さん…!」
A「んふふ…今度また是非、
雅紀と2人で飲みに来て下さい。 」
***
ーー…くん、二宮くん?」
N「、っうあ、!!」
さっきの佐々倉さんとのやりとりを思い出し
ぼんやりとしていたところに
突如現れた相葉くんのドアップ。
ビックリとドキドキで早鐘を打つ俺の心臓。
A「・・・ごめんね?やっぱ眠い?
・・・疲れてるよね?」
ぼーっとしてた俺を気遣ってくれた言葉が
またも胸に刺さる。
お茶漬け出来たから食べられそうなら食べて?
とテーブルに置かれたお茶碗。
ほわっと優しい出汁の香りがして、思わず
お腹の虫がキュルル…と鳴いた。
N「……///……ごめん。」
A「……くふふふ。良かった。さ、たべて!」
恥ずかしくて真っ赤になってしまった顔を
見られないように俯いて食べた。
そんな俺をニコニコしながら相葉くんが
見つめていたことも知らずに。