Deep Night《R18版》
第7章 Tiger
それでも家にはまだ帰れない。
金もない。
どこかの店に入ることすら出来ない帳達は、人気の少ない公園に向かった。
薄着の母親に鞄からパーカーを取り出す。
「母さん、頼みがあるんだ」
ガタガタと震えの止まらない母親は、視線を上げて「どうしたの?」と優しく答えた。
「妹を救うのに50万必要なんだ。宛てはあるから母さんが借りてくれない?」
「どうして?」
「……え?」
「どうして他人の子を助けなきゃいけないの?」
「母さん?」
聞き間違いだと思った。
そんなこと言うわけがない。
「だって母さんも可愛がってただろ?女の子も欲しかったって、あんなに喜んでたのに……」
「あの人の子をお母さんが助けなきゃいけないの?」
「な、なんでそんなこと言うんだよ!」
「あの人の借金でいっぱい苦しんだお母さんに義虎まで苦しめるの?」
「違うよ!ちゃんと返すから!学校も辞めて働くから!」
「もう借金は嫌よ!あんな子知らない!あたしの子じゃないし!もう嫌!こんな街に居るだけで気が狂う!」
突如喚き出した母親にオロオロとすることしか出来なかった。
「ほんの数時間であたしがどんな目にあったか分からないでしょ!?」
「母さん落ち着いて!」
「もう放っておいてよ!!」
ドンっと帳を突き飛ばし走って公園を出て行く母親を追いかけた。