Deep Night《R18版》
第8章 ミヨコ
「ミヨコ」
仕事から戻ってきたムツミが、周りの目を気にしながら小声でミヨコに言った。
「アンタ死にたくないよね?」
尤もなことを聞いてくるムツミに首を縦に振る。
「もしかしたら助かるかもしれない」
ニーナを見つめ微かな希望を口にする。
「あの太客が動いてくれればニーナは助かる」
でもそれは自分の希望じゃなくニーナの希望だった。
「近々オークションでニーナは売りに出される。それが決まればあたし達は処分されると思う」
手にじっとりとした汗がワンピースの裾を濡らす。
「チャンスはそこしかない」
え?と意味の分からない言葉にムツミを見ると切羽詰った顔で頷く。
「あたしに任せてくれる?」
なんの確信があるかは分からない。
それでも望み薄な希望に縋るしか出来ないミヨコ達は、最後のチャンスをモノにするために覚悟を決めた。
“わかった”
(あたしの命、預けるよ)