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じゃん・けん・ぽん!!

第8章 後悔

 大きな駆動音が聞こえた。
「うるさいなあ、町田家具!」
 思わず、声に出して言っていた。
 声を抑えたつもりだったが、意外に大きな声で喋っていたらしい。
 一瞬、周囲がざわつくのを感じた。
 手で顔を覆っていた裕子は、顔をあげて周りを見た。
 時計を見ると、ちょうど六時だった。すでに放課後だ。まわりにいる生徒は、五、六人程度だったが、その少ない人数の生徒からの視線が、裕子に向けられていた。
 少人数とはいえ、注目されるのはいい気持ちがしない。裕子は、首をすくめて下を向いた。

「町田家具?­」

 誰かそう呟いた。
 声の方を見ると、髪を茶色に染めた、小柄な男子がいた。裕子に話しかけたのではなく、どうやらひとりごとだったらしい。それでも、裕子はそのひとりごとが気になった。何かおかしなことを言っただろうか、という疑問が湧いてくる。
 胸に妙なざわつきを覚えながら、その小柄な男子生徒を見ていると、彼は席から立ち上がって窓から外を眺めた。そして、
「本当だ」
 と小さく呟いた。
 その直後、また大きな駆動音が響いた。

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