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じゃん・けん・ぽん!!

第9章 数には数を

【数には数】

 どうしようもないのでお茶でも飲もうと思った。
 いや、お茶を飲んだところで悩みが解決するわけではない。それは承知している。だから悩みを解決しようなんていう気は元からない。ただ、重く淀んだ気持ちを紛らわそうと思ったのだ。
 喫茶かじかの入口の扉を、池田裕子は押した。
 気持ちの重さが扉に宿ったかのように、扉は軋み音をあげてゆっくりと開いた。
 裕子は挨拶もそこそこに、カウンターのいちばん端の席に腰を下ろし、品書きも見ずにメロンソーダを頼んだ。女店主は裕子の方を見もせずに、わかりましたと返事をして準備にかかった。無愛想な態度が鼻につくものがあるが、それでも今はそっとしておいてほしい気分だったので、その態度が今はありがたかった。
 椅子に座ってため息をついていると、間もなく注文したメロンソーダが目の前に出された。
 裕子はコップを手前へ引き寄せると、ストローを加えて吸い込んだ。甘くて刺激のある液体が口の中に満ちる。そのおかげで、淀んだ心が撹拌されて、少しばかり軽くなったような感じがした。
 いや、軽くなったというか、沈んでいた澱が胸の中いっぱいに散らかって、落ち着かないような気分になったと言うべきかもしれない。
 その刺激的な液体を飲み込むと、液体は弾けながら喉を通って胃に落ちていく。
 ――予算はあるっていうし。
 予算に問題がなくて、要望の声が多ければ、問題なくその要望は通ってしまうだろう。
 それを却下することは、生徒会長という立場を例えどんなに乱用したとしても無理だ。
 ――恥をかくしかないのかな。
 そう覚悟した。
 その時、からん――と音がした。入口の扉に付いている鈴が鳴ったのだ。なんとなく顔をあげると、ちょうど同じ高校の後輩が入ってくるところだった。
 髪を茶色に染めた、小柄な男子だ。
 ――あの時の。
 その男子に、裕子は見覚えがあった。

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