テキストサイズ

幕末へ飛べ!歴史を修正せよ

第1章 タイムトンネル、開通

24才の5月、自室に、タイムトンネルが開いた。
前触れは、なかった。机の脇の板壁に、四角い約1メートル30センチ四方の、真っ黒な穴が、不気味にあった。
向こうは、見えない。
その穴がなぜタイムトンネルだと分かったのかも、自分では説明できない。
ただ、それは明らかにタイムトンネルだった。

何の躊躇もなく、その真っ黒な穴に頭を突っ込んだ。なぜ躊躇しないのかも、自分では分からなかった。
向こう側の出口は…
タイムトンネルの長さは、わずか数センチしかなかった。頭を突っ込んだと思ったら、もう違う時代だった。

何時代なんだろう?
辺りはうっそうとした森林、山中のようだった。林間を道が通っていた。

向こうから、頭にチョンマゲを結った十数人の行列が歩いてくるのが見えた。
ほとんどが肩に担いだり、二人で前後に担いだりして、荷物を持っていた。
一人だけ、刀二本差しのサムライだった。江戸時代だった。サムライは、年格好が自分に近かった。背が高くて細身である。顔は、よく見えなかった。

「ぎゃっ!」

悲鳴が響いた。
あっという間に荷物を持っていた連中が、散り散りに逃げ去っていた。
サムライが一人、とどまっていた。
黒装束の数人が、異常に軽い身のこなしでサムライを囲んでいた。
チャンバラだ。
リアルにチャンバラを見るのは、もちろん初めてだ。
しかしチャンチャンバラバラは、なかった。
黒装束たちはいつの間にかいなくなり、サムライはと見ると、道の真ん中に仰向けに倒れていた。
血は、あまり出ていなかった。
しかしサムライは、ピクリとも動かなかった。目を開いたまま、即死のようだった。

はっと我に返り、タイムトンネルへと逃げ込んだ。
タイムトンネルの脇に、箱が3つ投げ出されているのが、見えた。蓋が開いていた。長い刀、短い刀、羽織、裃などが入っているようだった。
しかしそんな物を拾い上げる余裕もなく、タイムトンネルに駆け込んでいた。
今、見たのは何だったのだろう。
しばらく、呆然としていた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ