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妖魔の憂鬱

第6章 置いてかないで!

社は頭に黒光りした角を生やし、背中には羽と尻尾を身に付けていた。身体からは湯気の様な妖気を放ち、眼を緑色に輝かしていた。

「社?なんか…大丈夫!?」

順子の喘ぎ声が止み、気を失ったころで…黒羽が記憶を奪う為に部屋に入ってきた。姿が変わってしまった社に黒羽は声をかけたが、社には黒羽の声が聞こえて居ない様子で…社はバルコニーへ出る為の窓を、開け放った。

「ねぇチョットッ!社!?どこ行くの?」
黒羽の制止も聞かずに飛び立つ社。

黒羽は急いで順子の記憶を奪い、吸血の傷を癒して章市の居る部屋に運んだ。全裸の2人を残したまま黒羽は社を追いかけた。

3日3晩…社の気配を辿りながら黒羽は探し続けた。いくつかの街を移動しながら色々な所から社の匂いがしてくるのを追った。やっとたどり着いても、既に社の姿は無く…只、乱れきった数人の人間が昇天して居るだけ…。時には半妖の住みかからも社の匂いがした。

やっと黒羽が社を見つけた場所は、町外れの小高い山の上に建てられた小さな舞台の上だった。そこは祭事には祭壇が置かれ、祭りの時には舞いを奉納する場所だ。

社の角と羽や尻尾は、無くなっていた。只の大男に戻った社は、顔面蒼白で呼吸を荒くして舞台の上で倒れていた。

「ゃ…社…大丈夫?」


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