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妖魔の憂鬱

第6章 置いてかないで!

黒羽はヒラリと舞い降りて、ヒンヤリとした社の体に触れると…熱を奪われた。驚いて社の体から離れて尻餅をついていた黒羽。

「ナニ!?何で?」

ここで社を見つける迄に、立ち寄った場所では…どこも情事の跡が有った。沢山の精気を集めた社は、今頃は丸々と太っててもおかしく無い筈だった。黒羽は、混乱した。

「病気?誰かに病気うつされたの!?社」
「人間の病気が、淫魔にうつるはず無いだろ!?」

黒羽は声のした方を振り向いた。そこには…あの日、黒羽の制止を聞かずに飛び立った社と同じ様に、黒光りしたスーツを身に纏っている淫魔が立っていた。

その淫魔は社よりも分厚い胸板で、壱星を西洋人にした様な顔付きだ。歴史有る彫刻の様な均整のとれた体格…只彫刻と違うのは、黒光りした角と羽や尻尾が有る事。

黒羽が「壱星?」と声に出して仕舞いそうになるほど、その淫魔は壱星に似ていた。

「其奴は若く、酷く不安定な淫魔だ。その為…消えかけている」
「何だよソレ!?そんな訳無いだろ!?適当な事言うなょおっさん!!」

突然現れた淫魔の見た目は、黒羽の好みだった。だが黒羽は社が消えると聞いて、思わず暴言を吐いた。それと同時に…自分で思っている以上に社が…イヤ、優月と壱星の事が…とても大切な存在に成っている事に黒羽は気が付いた様だ。


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