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林間学校

第5章 綾音と不思議な世界

「とにかく元の場所へ戻らなくちゃ」

翔太と綾音は歩き始めたが、どこへ行けば元の場所へ戻れるのか分からない。そもそもここへはどうやって来たのだろう?雷が落ちたショックでワープホールでも発生したのだろうか?雷が落ちなければワープホールが発生しないのならばこんないい天気では元の場所へは戻れないかも知れない。

もう日が昇って明るくなっている。気を失っている間に昼ぐらいになってしまったのか。
翔太と綾音がいなくなってしまったんで騒ぎになっているかも知れない。

そんなことを考えて歩いていると凄まじい雄叫びが響いてきて、見るからに獰猛そうな怪物が現れた。とても友好的とは思えない。というか血に飢えた肉食の野獣のようだ。

「逃げるぞ」

翔太は綾音の手を取って走り出したが、全力で走っても追いつかれてしまいそうである。

「ダメだ、オレがアイツを引き付けるから綾音は逃げろ」

翔太は怪物を引き付けるために走り出そうとするが、綾音はギュッと手に力を込めて繋いだ手を離さない。

「一緒じゃなきゃイヤ」

「あ、あや・・」

翔太は綾音をかばうようにして抱きしめた。もう怪物には追いつかれてしまうだろう。ここで死ぬのか・・。綾音と一緒ならそれも悪くないかと思った。

覚悟を決めた翔太の脳裏に早朝の綾音のおしっこシーンが浮かんできた。せせらぎや清流という言葉にふさわしい清らかな音のおしっこだった。そして綾音の大切な所、なんて美しいワレメちゃんだったのだろう。

死ぬ前に良いモノが拝めて幸せだと思う。
どうせ死ぬなら綾音の唇を奪っちゃいたいな。嫌われたってどうせ死ぬんだ。ああ、キスがしたいと思って翔太は目を閉じた。

怪物の巨大な爪に襲われると覚悟を決めているのになかなか襲ってこない。

ギャ~ッ、ギャオ~

グオォッ、グオッ

獰猛な吠え声がしたので振り向くと二体の巨大な怪物が取っ組み合って戦っていた。
どうやら翔太と綾音に目をつけたもう一体の怪物がやってきてバトルになったらしい。

(翔太たちは)オレの獲物だ、オレが先に目をつけた、引っ込んでろ、そっちこそ引っ込んでろとか言い合ってバトってるのかも知れない。

「とにかくチャンスだ、今のうちに逃げよう」

翔太は綾音の手を取って夢中で走った。

突然迷い込んだ見知らぬ世界だからどこをどう走ったのかは分からない。

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