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ビルの下でえんやこら

第1章 警備員

 サボさんはおもむろに立ち上がると、腰に手を当て、背中を反った。

 そらジローは、一点を見つめたまま動こうとしない。

「さあ、空くん。俺はもう大丈夫だ。先に出ようか?」

 少し休憩して体調がいいのか、サボさんが見回りをはじめようとする。

「いや、僕が、行きますよ」とそらジローが、立ち上がる。

 帽子をかぶり、懐中電灯を持つ。

 そして、出る前に一度、防犯カメラをチェックする。

「ん?」

 画面を見るサボさんが、なにかを見付けた。

「おい、いま、この画面に人がいなかったか?」

「人?」

 別の画面を見ていたそらジローは、気が付かなかったようだ。

「もう、人はいないはずですよ。上の事務所の人も全員出ていますし……」

「もう少し見てみるか。また通るかもしれんぞ」

 4分割された画面を眺める。時折、他のカメラの映像も切り換わり、確認出来る。

 カメラは7台。各階の通路と、ビルの出入口。そしてエレベーターの中。

 サボさんが見たというそれは、再び現れた。

「4階だ」とそらジローが、指を差す。

 よく見ると、それは子供のように見えた。

「これって、男の子だな……小学生くらいだなぁ、なにやってんだ?」

 サボさんは、目を細める。

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